シャツプラトー

ネクタイは、2枚のパンに挟まれた「具」のようなものである。「具」がまずければ、どれほどおいしいパンでもまずく感じ、「具」がおいしければ、多少まずいパンでも我慢できる。

イタリアンクラシックの旗手として知られた落合正勝氏はこう言ってました。「パン」ってスーツのことなのか、シャツのことなのか、一番お金をかけるべきは「靴」と言っているが、じゃあ、このたとえでいうと何なの?皿?とか突っ込もうと思えば、多くのことが言えそうですが、それはともかく、「目を引くところにクオリティの高いものを」という考え方は、少なくない方が賛同するでしょう。

彼はアイテムの優先順位として「靴>>>ネクタイ>>スーツ>シャツ」といったことを言っていたと理解していますが、別の方も「靴>スーツ・ジャケット…」と購入アイテムを考えると、SNSで投稿しているのを見て、やはり「靴」が重要なんだな、と改めて思いました。

 

それと比べ、シャツは軽視されがちです。「10万円のスーツと1万円の靴の組み合わせと、1万円のスーツと10万円の靴の組み合わせなら後者の方がかっこよく見える」と言われている通り、面積は他のアイテムより小さいけれど、存在感があり、「足元を見られる」靴や、上半身を覆うジャケットや、体の真ん中にあるネクタイに比べ、シャツは、見える面積も存在感も少ないです。そのうえ、肌着的なポジションなので、洗濯・クリーニング回数も他アイテムより高く、消耗品としての捉え、他アイテムに投資してシャツは〇〇円以下しか買わないという方もいらっしゃるようです。

 

とはいえ、シャツはズボン・ジャケット・ネクタイの接続をする、「土台」とも言えます。レスレストンに感銘を受け、シャツブランドをいろいろ試してみたいなと思って、次に手に入れたのが、フィナモレのシャツです。

ドレスラインでハンドで7ヶ所を縫っているそうですが、まず目を引くのは、襟の形です。ワイドカラーの、剣先の曲線の曲がり具合(Rと言えばいいんでしょうか)が、なんとなくイタリアっぽさを感じます。

柄は、ブルーのマイクロチェックで遠目では無地に見えるところが、カジュアルな着こなしから固めの着こなし双方に対応できそうで、気に入っています。ニットタイや、ストライプタイや、ブレザーはもちろん、スーツでもマッチしそうです。

 

特徴的なのは、袖のボタン位置。たいていはもっと先端に近いところにボタンがあり、袖を「キュッ」と締めていますが、フィナモレのシャツはカフス部の根本にあり、その先は自由という感じです。

実はこれで困ったのが、シャツの袖丈。海外ブランドのシャツは袖丈が長く、(私が短いだけですが)工夫が必要です。もっとも簡単なのは、袖ボタン位置を内側にして、袖が落ちるのを防止することです。この場合、シャツだけの姿のシルエットは、ややダボっとしますが、ボタン付けを自分でやれば費用は掛かりません。

が、このフィナモレのシャツは、カフス部の根本にボタンがあり、袖をきつくしてもずれ落ちてきそうです。そこで、袖丈の詰めを行いました。あまりお直しでいじるのは好きではないのですが、袖丈を詰めることで、シルエットもすっきりしたかたちに。

ない、シャツの袖丈は、鎌倉シャツの普段着ているサイズと同じになり、鎌倉シャツのバリエーションの幅広さと、サイズごとの設定はさすがだと思いました。

 

ちなみに、ガゼットの箇所はハンドで縫われている場所の一つですが、シャツと共地ではなく、白なのが、イタリアのモノづくりっぽさを感じます(笑)

かなりオーセンティックな形と柄なので、長く着たいものです。