今年もブルーが流行

フランスの思想家ロラン・バルトによるエッセイに「今年はブルーが流行」というものがあります。私なりの理解をすごく簡単に言うと「ファッションの言葉はふわふわしているよね」を指摘していて、たとえば、「光沢のある生地による濃紺ダブルスーツは冠婚葬祭にもぴったりです」と書いてあるとき、「生地/色/かたち」のうちどの要素が「冠婚葬祭」と結びついているのか、わからない、ということですね。

タイトルの「今年はブルーが流行」についても同様に、「誰が/何のアイテムで/どいうシチュエーションのもので」「ブルーが良い」と言っているのかわからない、けれど、ファッションについて語るときによく見るフレーズだよね、という指摘です。

 

 

個人的には、このような「何か言っているようでよくわからない」ファッションワードは、「気分」だと思っています。「トレンドとして、フレンチムードがある中ですので、インナーはポロを着るのが気分です」とか、「カジュアルなアイテムによるコーデですが、敢えてフォーマルっぽい黒の革靴を合わせるのが気分です」とか、平たく言うと「自分が、イマはまっている着こなしやファッションアイテム」のことを指しているのでしょうが、順接・逆接問わず「気分です」と表現できる点や、あいまいながら何か伝えてられる点が良いのか、多用されているイメージです。

 

「ダスティカラーの流行からニュアンスカラーへ」といったトレンドのほか、「もともとはバウアーは、カジュアルなアウトドアアイテムだけれど、スーツに着てもマッチする」のような、文脈を踏まえた着こなしがファッションのかなめでしょうし、色味は映像や画像、実物を見ないと、「しっくりくる/こない」がわからないことがあり、「気分」は非言語的な感触を、短いワードで端的に表現したものと言えるかもしれません。

 

一方で「永遠の定番」は、せっかく買うファッションアイテムを長く使いたいという点から、重要視され、特に購入者としてはいろいろと着まわしてみたい、と思うところだと思います。その観点で考えると「気分」としての、自分の気になる組み合わせを楽しみつつ、次の「定番」になりそうなアイテムをそろえていく…のが良いのでしょうか。

 

色味ということでは、グレーやネイビー系統は、定番ではありますが、色を軸としてアイテムを変えてそろえていくことで、「失敗」が少なくそろえていくことができるのかもしれません。

ネイビー系のジャケットの延長で切れるかなと思い、ネイビーのスエードブルゾンを手にしてみました。レザーブルゾンなら、表革やスエードのブラックやブラウンが思い浮かぶところですが、表情がジャケットとだいぶ違うため、「違うな」となりやすい懸念があり、ネイビーのスエードブルゾンとしました。ボトムスやインナーとのあわせが、ネイビージャケットと同じようにタイとシャツをして着ることもできそうです。もちろんブルゾンなら、インナーはニットやTシャツが似合うところですが、それもネイビージャケットと同様に考えることができるかな、と。

 

こちらは、ネイビーベースにブルーとホワイトのラインが入っているタイ。春夏っぽいスタイルに、と思いオーダーしました。よく見ると色のラインによって生地感が異なるものでして、そういった生地感のタイは初めてなので、青系統のものとしました。先ほどのブルゾンに合わせることができそうですね。

あまり同じ色味ばっかりのものだと味気ないのは事実ですが、「チャレンジ」する場合は、まずは色を軸に考えると、しっくりくることが多いかもしれません。