気分なの(In the Mood)
「今の気分」は、ファッションを語る上で最も出てくるワードの一つではないでしょうか。
ファッションアイテムのチョイスやコーディネートでのポイントを語る上で、「○○を取り入れたコーデが、今の気分です」などと語るセリフを多くの方が見たことがあるでしょう。
「気分」ってなに?とか思うこともありましたが、「トレンドの流れ」が、シルエットや色、柄や素材感など、さまざまなポイントがある中で、アイテムごと、コーデごとに全部を語るも煩雑ですし、そのトレンドの中でも自分が関心の高い要素をもって、「今の気分」というのだと、考えています。
ドレスクロージングで言えば、タイトフィットでネイビータイに白シャツ、ネイビー無地スーツのようなパキッとしたアイテムが隆盛を極めた2010年ごろから、クラシック回帰と言われる、ゆとりのあるサイジングや、さまざまな色味を盛り込んだ柄物などが注目を集め、その中で、ということでしょうか。
そんな流れの中、ジャケットのシルエットは胸板を強調し、ウェストは絞る……といったタイトなものから、ほどよく絞るモノに変わりつつあります。Stile LatinoのダブルブレスレッドジャケットLeoはその究極のシルエットかもしれません。幅広のラペルは破綻してそうにも見えますが、着てみるとそんなことは全くない革新的な試み。胸板部分の厚みと腰のあたりの細さの強調のデザイン……唯一無二の着心地と相まって、「イタリアテーラード」が詰まっている1着です。
それとは違うアプローチを感じるのがTito Allegrettoです。同じイタリアナポリブランドですが、袖は極細ではないですし、ウェストはそこまでくびれず、ラペルは革新ではなく、クラシカルな幅広で、ともすると卒ないだけに見えます。
しかし、一枚襟やフィットするアームホールと、ふんわりよりも、パキッとしたラペルのアイロンワークなど、着心地からはこだわりが伺えます。「リラックスして着れる・ちゃんと吸いついているが両立しているジャケットと言えるかも知れません。
2022年8月、六本木で行われていたオーダー会で頼んだのは、ブルーのペーンが入ったグレンプライドのジャケット。この間、到着してずいぶんと時間のかかるオーダーでしたが、その甲斐はありそうです。
クローゼットを見回すと、あまりグレー系のアウターはほぼなく、無意識に敬遠してた色です。ジーンズをはじめ、手持ちのブルーアイテムと合わせていければ、活躍するグレーアイテムになるかなという目論見で決定しました。こうしてみると、薄いブルーペーンなので合わせるアイテムは広そうです。
なお、「グレンプライドに、青のペーンが入っているものを、"プリンスオブウェールズ"と言う」解説があるサイトにあったのですが、「グレンプライドの別名は"プリンスオブウェールズ"」とする解説もあったりで、定かではないようです。プリンスオブウェールズ、英国王室の皇太子が愛用したから、という点は共通しているのでグレンプライド好きとは言えるのかもしれません。
サイズはいつもより+2で、ちょっと前が余る感じですが、そのゆとり感が、「今っぽい」と言うことでしょうか。
わかりにくいですが、ジャケットの胸下にある、「細腹」の切れ込みが、腰ポケットの下まで続いており、これはナポリテーラー・サルトリアの特長の一つなんだそうです。
「今の気分」を体現しているシルエットのTito Allegretto、今後もクローゼットに追加していきたいブランドです。