負けるシャツ

「シャツは消耗品」と言われます。シャツはジャケットやパンツよりも洗濯回数は圧倒的に多いですし、肌に近いところなので、蓄積するダメージが高いと言うことがあるのでしょう。

 

靴やジャケットは10年もの、20年ものを聞きますが、シャツについて同じような「使い込んだ」ケースはあまり聞いたことがないのもそのためでしょう。

 

そのため、シャツは質より量というか、この価格帯で、という方針のもと、ワードローブを揃える方もいらっしゃると思います。

私も同様にシャツを買い、これまで着てきました。

 

ところで、良いシャツの「良さ」はなんでしょうか。

生地のクオリティ?縫製の丁寧さ?

個人の好みとしてはいろいろあると思いますが、私は「型紙の良さ」だと思います。

ジャケットも同じように「型紙の良さ」つまり、自分の身体に合うかが大事ですし、靴もメーカー名より、まず自分の足に合うか、が大事です。

その点では何を今さら,と言う話ですが、シャツってピチピチに着るのでなければ、そこまでサイズを気にしなくても良いアイテムではないでしょうか。

襟が自分の首にフィットしているか、ジャケットを着たとき、ちゃんとシャツが覗いているか。

この辺りは気にされることはあるでしょう。しかし、それ以外はあまり……と考えている方も少なくないではないでしょうか。

シャツのデザインの面で考えると、胸板が厚い方、お腹が出ている方、いろんな方に着てもらえつつ、素肌に沿うことは無理難題になるでしょう。そのため、シャツシルエットは、スッキリ見えることが既成には求められ、それ以上となるとオーダーするステージになるのでしょう。

私の経験としては、正直これまで着てた鎌倉シャツなどの国内・海外シャツでそこまで型紙やパターンの違いを感じることはなく、それが不満でもないし、まあこんなものかな、と思っていました。むしろ、袖の長さなど、総合的なパターンとしては海外ブランドより鎌倉シャツの方が好みだったこともあり、鎌倉シャツで探してみてないようなものだったら、そのブランドで買うことを検討してました。

 

まあ、そんな感じで自分の中の「シャツの相場感」が出来上がっていたのですが、良い意味でそれを打ち崩す、フィット感を高めてくれる既成シャツを体験しました。

 

Les Lestonという大阪発のオーダー中心のブランドです。

 

なんと言ってもパターンがすごい!と思わせてくれ、バックも独特です。

シワ、のような生地の縫い寄せなどにより型に沿わせているのかな?とシロート目に思えますが、ジャケットの「肩に合う」がシャツでも体感したのは初めてです。(下画像は別メーカーシャツ)

海外の一流メーカーと同じような価格帯で決して安くないですが、シャツを着るだけでテンションが上がる唯一無二のブランドだと思いますし、made in Japanのシャツでここまでのレベル感を出してきたことにとても感動しました。

 

また、ブランドの思想が「どんどん着込んで欲しい」とのことで繊細な手縫いでなく機械縫いらしいのですが、そうした現代のドレスシーンの裏側のメンテナンスや使い続ける=ランニングも考えられている点がとても素敵です。

 

良い洋服は曲線だらけの身体に自然に沿って、かつさりげない主張をするものだと思いますが、トラッドスタイルにおいての良いシャツは「ネクタイやジャケットや、身体に対して存在感を消して、まるで負けているけど、強烈に支えてくれる」ものなのではないでしょうか。

実は夏のセールで手に入れたもので、おいそれと手に入れるレベルではないのですが、ぜひ手に入れていきたいですね。