星影のスカラー
カジュアルなスーツとしてツイードやコットン、リネンなどがありますが、シャツやタイにも同じようなジャンルがあります。
コットンの織り方やストライプなどでもフォーマル⇔カジュアルの幅があるのですが、無地の場合、色については、白いシャツがもっともフォーマル…というのはご存じだと思います。ビジネスシーンでは、薄いブルーのシャツも使用できますが、これはロンドンでは、新米には許されない色だったとか。
ピンクとかイエローとか、ほかの色付きシャツはカジュアルでしょうが、白やブルーに近しい色のものであるものであれば、タイドアップする場合、そもそも周囲にタイを締めている人なんて稀、という現代では、とやかく言われる場面は少ないのではないでしょうか。
こちらはデニムと似ている表情ながら、織り方がデニムと異なるシャンブレー織りのシャツです。Guy Roverというイタリアブランドのシャツです。やや濃い水色ですが、デニムと同じ色落ちが楽しめるうえ、色落ちしてくるとよりシャツらしくなっていく点が面白いですね。ワークシャツなので、両胸にボタンがあり、素材の粗さや縫い針のステッチからもカジュアルな雰囲気を漂わせていますが、ジャケットの中に着こんでしまえばそこまで目立たないのではないでしょうか。
ジャケット類の中でも立ち位置としてはややカジュアルなブレザーと、同じくカジュアルなニットタイと合わせてみました。ブレザーはBeams Fオリジナル、タイはフランスブランドのBreuerのもの。
全体の色調がブルーベースなのと、ドレスクロージングアイテムの中でも、カジュアルなアイテムで統一しているので、まとまりがあるように見えるのではないでしょうか。(…と書いてて、チーフが白でフォーマル感ありますね……)
同じブレザーとシャツにネクタイだけ変えて。Atelier F&Bのストライプタイ。同じくブルーベースなので、統一感あるように見えるのではないでしょうか。
ちなみにストライプはピンクに見えて、中央に白、その両側を赤が走っている構成です。
ざっくりいうと、ドレスアイテムの中でも生地がざらざらだとカジュアル、つるつるだとフォーマルなので、ジャケットの生地/シャツの生地/ネクタイの生地がざらざらで統一したほうがまとまりが出てきます。ニットタイコーディネートは、まさにその構成で、ストライプタイのものは、シルク素材なので、そこだけドレス度が高いといえますが、ストライプ柄=カジュアルなので、そこまでおかしくないかな、と。
今度はブレザーに、ベージュのタブカラーシャツ。ベージュカラーのシャツは白シャツよりも、表情が柔らかい、「ほかのアイテムとの色の差異がパキッとしていない」アイテムとして昨今注目されています。ベージュは、元来、というか、いまでもビジネスドレスコードには適さないでしょうが、ジャケパンが許される環境でしたら、白シャツよりもやわらかい雰囲気を醸しだせるのではないでしょうか。
今度はブレザータイを変えて。「ベージュ=きわめて薄い茶」から、fumagalli ブラウンのストライプとしてみました。
より、こちらのほうがシャツの色味がわかるでしょうか。
より「茶色系統」の存在感が強いので、茶系のスーツとベージュシャツだったら、基調となる色の統一感で合わせる、ブレザーとベージュシャツだったら、シャツの色とジャケットの立ち位置としてのカジュアルさを合わせる、というアングルです。ジャケパンの「パン」は、たとえばチノパンだと茶色ベースでまとまって見えるのではないでしょうか。
あるいは、明るめのネイビーブレザーでもいいかもしれません。色合いのカジュアルさをそろえる試みです。鮮やかなブルーやベージュ・生成りはフレンチカジュアルテイストかも、しれません。
コロナ禍によって、これまでカジュアル化の流れがますます加速化していくでしょうし、タイドアップスタイルは減っていくと思います。一方で、装いの「個性:その人らしさ」がよりはっきりしていくのではないでしょうか。スーツやシャツ、タイについて色や素材の「方向性」をそろえることを意識すれば、「タイドアップなのにカジュアル」もそんなに難しくないと思います。