愚管ノート:服喪の装い

西洋から伝わってきたスーツスタイルですが、リクルートスーツや冠婚葬祭の「礼服」は、日本独自の文化としてよく指摘され、スーツの着こなし文脈では、批判されがちです。曰く、「厳粛さを表すならシックなダークネイビーやチャコールグレーで十分」「黒はモードか、モーニングやタキシードのような儀礼やパーティーの色」「英国やフランス、イタリアで礼服なんか着ない」などなど。

 

社外の人と接しない、技術系など、スーツを着る必要性ない職務であっても、とりあえず規定でスーツ着用にしておく、と同じく、戦後にスーツが広まっていった中で、モーニングやタキシード的な、「冠婚葬祭に着る服」の発想で、「これから行く場所と会う人の関係性を考えて、自由に着ろ」よりは「これを着ろ」のほうが、悩まなくて楽ですので、受け入れられてきたのかもしれません(おそらく少ないであろうスーツの着こなしが楽しいひとを除いて)。

 

実際、海外ではどうなんでしょうか。

英国女王エリザベス2世の崩御による喪に服する人々の服装を見てみたいと思います。

 

新王チャールズ3世が、初めてバッキンガム宮殿に到着、献花を見、訪れた人々に応える際の写真です。

 

 

国王はスーツは、1枚目では、黒かネイビーかわかりませんが、2枚目を見ると、ネイビーであることがわかります。靴は黒の内羽根(パンチドキャップトゥかキャップトゥでしょうか)です。タイは黒にも見えますが、スーツと合わせるならネイビーでしょうか。スーツもタイも非常に濃い色であることがわかります。

 

ウィリアム皇太子・ハリー王子が同じように献花を見るシーンでも同じくネイビースーツのようです。

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ハリー王子のスーツのラペルやタイがウィリアム皇太子と比べると細く、モードっぽいというか、よりファッショナブルなのが興味深いです。

 

一方政治家はどうなのでしょうか。

ボリス・ジョンソン前首相の動画を見ると、前首相自身は黒または紺のスーツのようで、同じく議会にいる政治家へ注意を向けると、明るめから暗めまでありますが、ネイビー系統またはグレーのスーツに無地のタイを締めている方が見て取れます。

 

市民と同じく列に並んでの弔問で報道されたデイビット・ベッカム氏も、ネイビースーツにネイビータイ、ネイビーのコートを着ていたようです。

 

無地のスーツに無地のタイでシックに装う。

日本の場合、もちろん礼服が、というのが初めに来る方も多いと思いますが、思い思いに「落ち着いた」服装を選ぶのが間違いなんてことはなさそうです。