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評装のテイコク

京都の夏は東京の夏とどことなく違う気がします。中央に鴨川が流れ、東京よりも緑が多い分、涼しい気もするし、盆地ならではの昼の暑さがあるような気もしますね。

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京都のお茶屋一保堂茶舗で緑茶・抹茶を楽しむ日本人を見ると、京都=日本の文化を味わい、楽しむ場という認識がやはりあるような…
半人前の服飾好きとして、気になるのが、日本文化での洋装のドレスコードの位置づけです。
もちろん「大礼服」とか明治期に式典用に決められた和服と洋服のドレスコードはあるのだけれど、もっと身近なところで、です。
たとえば、冠婚葬祭やビジネスでも礼儀を特に重んじる場では、靴はキャップトゥ(ストレート・チップ)、ネクタイは無地またはドット、シャツは白、スーツは無地のネイビーかダークグレー…といったようなコードがあるのです。
一方で、カジュアルなら、「ポロシャツにコットンパンツにスエードのローファー」といったコードとまでは言わないだろうが、ぼんやりとした法則性のようなものはあるでしょう。
しかし、日本文化でイメージする「お茶の会に行くとき」「神社に観光ではなく、お参りに行くとき」にどういった服装で行けばよいか、という指南はないようですね。
もちろん、神社やお寺に参拝する時、大事なのは格好よりも気持ちだろうし、こだわるなら和服で、ということなのかもしれません。
そもそも、ドレスコードなんて考え方も、21世紀になって逆に馬鹿らしい物かもしれないし。
まあ、しかし、洋装が服として登場して100年は経ついま、そういったガイドラインのようなものがあってもいいのではないか、まあないよりは…
(なくていい)

武野紹鴎だとか、千利休で有名な、いわゆるお茶の茶会の場合、2つの意味が内包されていと考えてます。
一つはもともと、和み打ち解ける場としての茶会とは言え、宮中・幕府の行事のとしての茶会。
この場合、儀礼なのだから、あらたまった格好が要求されるのは、まあ理解できます。
2つ目に、千利休で有名になった「侘び寂び」のお茶があり、これが面白くも難しい。
もともと、千利休の時代では茶屋を建てて茶会をしていたが、
茶屋は安土城聚楽第の庭の片隅にあるようなイメージで、
茶屋自体も、安土城聚楽第の豪華さとは対照的な質素なつくり。
「都会の喧騒を離れて」といった観光のキャッチコピーがあったりするがまさにそれで、城や宮殿のような公の場から離れて一息つく場としてあったようです。
だからこそ、腹を割って二人きりで他言無用な話が出来る場として隆盛の一要因にもなったようなのですが、一言でいうと「市中の山居」と呼ばれているような場。
リラックスする場であり、山居であり、質素な建物であるならば、カジュアルな服装でも充分なように思えてきます。
しかし、一方で、大名同士が密会したりする政治的なアンオフィシャルを装ったオフィシャルのような場所だったという意味もありそうです。

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現在、年に一回開催されるサミットは、くつろげるように保養地で開催されているという話も聞くし、初回に開催したジスカール・デスタン氏は「アンオフィシャル」な色であるブラウンの革靴のいでたちで、リラックスムードをつくったとも聞きます。
そういった意味では、カジュアルな出で立ちでもいいのではと思えてくる一方で、正式なお茶会といった「格式」を考えるととそれが全てでもない気もします。
「一座建立」というのは、その時、その時の場に合わせた立ち振舞いによってうまれる旨味であるならば、誰がどういう目的で行われるかということによって自由自在に変化する必要があるという、身も蓋もない結論になりそう…
ただ、歴史と格式を考えると、襟付きのシャツであったり、ジャケットのほうがよいのではないでしょうか。
そして、躙口で靴を脱ぐことを考えると、スリッポンタイプのローファーだとか、サイドエラスティックシューズ、サイドゴアブーツなどが適任なのではないでしょうか。

寺社での格好を考える時、最初に頭によぎるのが、正月の首相などの伊勢神宮参拝。
このとき、洋服としては一番格式が高いモーニングを着るのが通例です。
また、伊勢神宮の神殿に参拝する時、「ふさわしい格好」でないと認められないこともあるそう。ふさわしい格好というのは、どうやらダークスーツであることを鑑みると、スーツで行くことが望まれそうですね。
そうすると、ネクタイ着用の上でスーツ、ブラックのスームスレザーの靴が良いのでしょうか。最上級の「格」を考えるとキャップトゥがあげられます。
ところで寺社、特に神社は森の中にあることが多い。
これは、鎮守の森に囲まれているということなのだが、西洋的には都市でないカントリーサイドに属する場所であるため、カジュアルな格好でも良い気もする。
が、やはり祈りの場として「オフィシャル」であり、上のようなことを推奨される以上、一定のご利益を求めたり、祈念して参拝するのであれば、ある程度の格好は求められそうですね。

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ただ、旅行などを考えるとそのためだけにスーツを着て行くのは少々窮屈だし、そこまで要求される場所でないのなら、
オフィスカジュアル的な装いでお参りするのが落とし所ではないでしょうか。

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なんてことを考えて、7月20日ごろ、ダークネイビーのジャケットに青系のクレリックシャツ、紺のニットタイ、黒のキャップトゥで京都に行ったのでした。
実際はやはり暑く、ジャケットはほとんど脱いでいたし、今回の京都という土地との「一座建立」が成功したのかはわからない…
思いの外、靴をぬぐ機会が多く、次回があったら、スリッポンで行くかもしれないです。
また、次の一座建立がありましたら。
一笑意匠。

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