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装の考古学

ファッション

ファッションの歴史を知っていると、これをどう使うのか?と疑問を感じたとき、あるいはマンネリに陥った時、突拍子もないアレンジを見たとき、その正しさや飛躍具合がわかるわけです。もちろん、そこに拘泥するとかたくななスタイルに陥ってしまうのですが…

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たとえば、パンプスと聞くと女性ファッションの基本という気がしますが、これはもともと男性が(も)履いている靴のスタイルでした。ルイ13世肖像画なんかが、フランスの貴族文化の象徴としてよく登場してますが、彼らの足元をよく見ると、パンプス。オペラパンプス、といったカテゴリとして最上位の靴のスタイルとしていまでも用いることがあるそうで、英国靴メーカーのなかにはいまだ取り扱っているようです。ローファーはこんにち、最もフォーマルから遠い位置にある靴のカテゴリモデルですが、タキシードなどの礼装に用いることがあります。これはパンプスに近いデザインならば、ということなのでしょう。あるいはタッセルローファーがスーツにも合わせられるというのもこうした歴史の流れの感覚の上にある気がします。

(一方で、室内履きから、現在のローファーの流れがあったのでしょう。違いはエプロンダービーの箇所なので、そこがフォーマル度の高低にかかわっていると言えそうです。)

こうしたものは知識として本などから得ることもできますが、肖像画や写真からも得ることができます。絵や写真は文字以外の情報が、視覚的に伝わるので着丈や注目するアイテム以外の全体の雰囲気というべきものも伝わってきます。東京の昔の写真を見て、今との風景の様変わり具合や逆に現存する建物に感動するだけでなく、道行く人が何を着ているのか、どのように歩いているのかをつぶさに見ていくと、昔の東京の人の装いや生活がわかってきます。

または、時代劇が着物でチョンマゲなのが普通なように、明治期・昭和期のドラマなどでも、当時の服装、そしていまへの変遷が分かります。明治期の人は三つ揃えのスーツしか着ないところを見ると、(欧米はともかく、少なくとも日本は)それが当たり前の時代だったのだなあ、と感じることができます。もちろん、チョンマゲのスタイルが戦国時代と江戸後期では違うはずだが、このドラマではいっしょくただ、なんてことのように、時代考証がしっかりされてないものもありますが、いつもストーリーしか追ってないドラマの新チェックポイントとして見れば見方が変わってきます。

洋装の原点、欧米ではどうだったのか?というのもこうしたドラマなどでわかるところが大きいです。欧米の場合1950年くらいの映画は簡単に視聴ができるのも多く、当時の衣装がそのままスクリーンで見られるものです。

時代考証がしっかりしているドラマとしては、BBCドラマ『ダウントン・アビー』シリーズがとても参考になります。貴族ドラマなので、当時の貴族の風習・カルチャーを知るきっかけにもなりますが、1800年代終わりから1900年代の前半を描いているこのドラマシリーズを見ると、最初「スモーキングジャケット(タキシード)」が燕尾服より明らかに格下だったのに、だんだんと簡単なディナーの席ではタキシードでも問題にならなくなってきていたり、地元での散策=オフの時間と、ロンドンでの会合=オンの時間では服の色合いが異なっていたりととても示唆に富んでいます。