ほしの箱舟

古典的に素材の味を活かすのは真逆な、クリエイションの斬新さが出ているお店が、東京だと清澄白河にあります。清澄白河という街は清洲寮のような古きものの再評価と、ブルーボトルコーヒーのような新しい風の交差路といった趣きで下町的な街並みの中に新しいものがあります。
 
そんな清澄白河を和食で表しているのが「ほ志の」なのかもしれません。
 
昔はお寿司屋さんであったという和食屋さん。どれもひねりを加えてあってここだけのクリエイションになっています。
 
一番わかりやすいのが、「肉じゃが」でしょうか。
 
画像を見ればわかる通り、「肉じゃが?」と突っ込みを入れたくなる串に刺された肉じゃがです。
 
しかし、「牛肉とジャガイモの醤油甘煮」が肉じゃがの定義であるならば、そこからは外れない「肉じゃが」というしかない一品であります。
 
このような再構成で見た目をガラッと変える手法はフレンチなどのガストロノミーっぽさも垣間見えます。
 
伝統的な出汁や素材の味を活かす調理法だけでなく、それにプラスアルファの西洋的な素材・調味料を用いた味付けや再構成をおこなうところが、新機軸といえそうです。
他にも「鯖と奈良漬けのサンドイッチ」はサバのしっとりあっさり具合と奈良漬けが良いマリアージュの一品である一方、「ニラ玉」は肉じゃがと同じような料理の再構成したものといえる、味付けそのものは上品でオーソドックスながら見た目が面白いです。
 
一方で、もう一つ注目の方向性としては、フォアグラの多用でしょうか。冷凍したフォアグラを削って振りかける「オムレツ」や、「鯵とフォアグラの炊き込みご飯」といった料理でのフォアグラといった和食にフォアグラをプラスしたものをよくメニューで見かけます。和風のものにフォアグラを入れる、これだけで創作度が増すかもしれませんが、冷凍や、フォアグラと一緒に鯵を炊き込みご飯素材にするなど工夫もしっかりしていると思います。もちろん、フォアグラをかけるオムレツは唯一無二のフカフカ具合ですし、炊き込みご飯は「だし」がしっかりしており、フォアグラがご飯とともに炊きあがったときいい存在を出しています。
ドリンクメニューは日本酒メインのように思えますが、意外にもワインもあったりします。
 
もともと現在のお店の主人のお父さんがやってらしたお寿司屋を現在のスタイルでの営業に変えたらしく、大きく白い暖簾のほかの、店内のつくりや食器などはお寿司屋さん時代のものをそのまま使っているということを感じます。
 
3人以上だとアラカルトで頼んでいいも思いますが、コースもあり2人とかではこちらの方が使い勝手がいいかも。
11月のある日では下記の6品でフルコースでした。
・前菜盛り合わせ5種
(和牛レバーの塩辛、とびっこのポテトサラダ、ラムレーズンチーズ、生ハムのイチゴ添え、牡蠣のタルタルとフルーツトマト)

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・京人参のムース ウニ コンソメジュレ

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・炙りしめ鯖 柿

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・フォアグラ パンデビスのサンドイッチ

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・松阪ポークのロースト ラヴィゴットソース

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カラスミとキノコのリゾット

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どれもおいしいですが、炙りしめさばと柿の組み合わせが秀逸でした。

これで、4000円という価格設定はとてもリーズナブルです。

和食にフレンチらしさでアレンジしてる点やコースもアラカルトもコスパが素晴らしい、通い詰めたくなるお店です。

 

注文はない洋服店(島田洋服店)

服店、と名のつくものに入ったのはこれがはじめてかもしれない。アパレルブランドの路面店セレクトショップに立ち寄ったことは会っても、「洋服店」と名前のついたファッションショップはなかなか珍しいのではないでしょうか。洋服店という名前だと高橋洋服店のようなオーダーメイドの仕立て屋さんを思い出します。

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この島田洋服店、実は洋服屋さんではなく和食屋さんです。
「お任せ」のみのどちらかというと正統派のものをだされる料理屋さんです。

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先付?温泉玉子。タレはあっさり目でそこに柚子が良いアクセント

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お造り。器が良い。まだお伺いした時は残暑厳しい時でしたが、はやくもカンパチが。タイも甘くて食感がしっかりしてます。

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夏らしく、汁物はナスと穴子。今風の濃い味ではなく、優しい味です。

 

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はカツオの藁焼き。提供される直前に藁で焼かれるカツオは香ばしく、火加減も絶妙です。

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ノドグロ?の押し寿司。やや酸っぱめなのが夏に合っています。ただ、魚の押し寿司加減はそこまでもなく、素材の味といった感じです。

タイかグジだったような……

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トマトのジュレ的なものが和風なのに合っていてよかったです。

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コースで唯一変更可能なのは、ご飯を白米から炊き込みご飯に変えられること。この日は夏らしく「たこ」か「あゆ」でした。たこ飯は食べたことあるものの、鮎ははじめてなので、鮎を選択。土鍋で炊くご飯はこういうところならではですね。

 

こういう炊き込みご飯が美味しいお店はとてもステキ。

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デザートはくだものとかき氷的な氷を添えたもの。これもあっさり目

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店名はもともと洋服店としてスタートしたお店をお義父さまが畳まれたので活用しているとか。ミシンのロゴがかわいく、素材の味を活かした味付けと品揃えはリーズナブルだと思います。

また秋が深まったころにいきたいですね。

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都ゆく細道

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一年に一度は東京らしくないところに行きたくなる。それはもっぱら京都だったりして、行き先の偏りはどうにかしなければと思うのですが、京都、関西は見るところが多くふらっと行くのにも困りません。

 

台風が来る10月の頭、台風一過の気温は20℃前後で、晴れもしくは曇り、こういうときに困るのが格好です。

もう一年前の夏から秋の変わり目をどう過ごしたかは記憶になく、毎年手探りです……

とりあえず、雨はもう降らない。ならば革底の靴。そして、気温と京都の寺社の脱ぎはぎを考えるとスリッポンのほうがいい……と、考えチョイスしたのがJohn LobbのAshleyです。アンラインドかつ、履き慣らしたこのローファーの快適度合いは保証済み。実は最近手に入れたGGのAntibesと迷いましたが、まだ擦れることがあり、より長時間の履き心地に不安がない方を。

 

 

さて、肝心な上着やらです。ジャケットがあったほうが財布やケータイなどの収納がラクなので、あとはまあ、好きなので極力羽織りたいところですが、25℃を超えるとやや無理してる感が出て、28℃くらいになると汗ばんで来る気がします。そこで、多少涼しいことの期待を込めて、リネン混のジャケットと、その下は半袖Tシャツとしました。長袖+ジャケットはやはり最高気温23℃くらいのスタイルでしよう。

最近好きなダブルブレステッドのジャケット+VネックTシャツ。

シングルプレステッドのジャケット+Tシャツの組み合わせはかなり市民権を得てるのですが、そこへ行くとダブルブレステッドはまだまだかっちりした服に思われていそうです。ダブルブレステッドの期限がよく言われるような船乗りなどの服装であるならば、そこまでかしこまって着る必要性はないはずです。しかし、布面積とボタン数からか、シングルよりも高級感を醸し出してます。これはもったいない、ということで、考えているのがダブルジャケットのカジュアルな着こなしです。

もっとも、リラックス的な「余白がある」装いがどうも難しく、Tシャツやタイあり、タートルネックなどは余白を埋められるので、できても、本来タイがあるべきところにないノータイシャツのスタイルがダブルジャケットにはどうにもしっくりこず、これもまだまだなのですが……

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兎にも角にも、この格好はまさに適温で関西を満喫することができました。

一泊2日でも靴には疲れが見えますが、ちゃんとケアしてあげれば、いままで以上に輝くのはさすがジョン・ロブです。

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関西に住んでたこともあり、思い入れの地を周ると東京では得られないリラックスができる気がします。

Diao Ye zong:茶靴の風味

凋葉棕とは朽葉色のことを指すようですが、この色はさりとて、葉が朽ちるといってもさまざまな色があります。

ベーシックな革靴の色は黒と茶ですが、バリエーション豊富なのが茶の程度。赤みのあるダークブラウンやライトブラウンもあれば、赤みがまったくないブラウンそのまま、といった色もあり、栗や松、さまざまな木の色に例えるとことが多いようです。木といっても、表面を見てそこまで違いはないですから、ここでの木というのはおそらく、家具としての表面の色合いのことなのでしょうか。

 

同じ名前でも違う色だったり、同じ茶色を違う名前で呼んでいたりしますが、まずは自分の好みの色を見つけるのが茶靴を好きになるポイントでしょうか。

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左からガジアーノ・ガーリング、エドワード・グリーン、ジョン・ロブのローファーです。こうしてみるとガジアーノ・ガーリングだけ一段明るい赤茶という感じでしょうか。いずれの色も茶靴としてはオーソドックスな色だと思います。EGのバッキンガム、JLのアシュリーはアンラインドローファーなので、どちらかといえば春夏向きのローファーですが、一年を通して履ける色合いの靴となっています。GGのアンティーブスは内張もしっかりとしたローファーなのですが、色合いは本来もっと薄く、濃いめにしようとしてこのミディアムブラウンの色合いまで来たのですが、もう少し濃い色に染めていきたいですね。

 

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一方こちらはミヤギコウギョウのUチップ。ブラウンで実はもっと明るめ……のものが標準らしいのですが、明るすぎるよりも暗めのUチップを探していたので手に入れました。ほぼ赤みはなく、ぱっと見は黒に見えそうほどの濃い茶色。

 

靴が靴らしくなるのには2年くらい経ってからと聞いたことがありますが、特に茶靴はその傾向にある気がします。アンティーク模様や好きな色合いに染まっていくのが手に取るようにわかるのは茶靴ならではです。

 

お箸を止めるな!

最近、和食を食べる機会が多いせいか、あるいは以前よりぼんやりと食べることはなくなったせいか、やや傾向があると思います。

創作に振る創作系、伝統を守る伝統系の大きな枠組みは昔からあるものでしょうが、焼き鳥のワインとのマリアージュや、熟成寿司など、ここに来て21世紀のトレンドなのではないでしょうか。

 

1)伝統系

昔からの作り方を守るもので、寿司がわかりやすいでしょうか。使うネタの種類も江戸前的な範囲に限定しがちですが、その分わかりやすく、仕事をするタイプのもの。

懐石やちょっとお高い居酒屋系だと出汁はちゃんと魚介で取り、刺身も変わったネタより季節のネタを使い、旨味をだしてくるタイプ。老舗のお店が必然的に多くなりますが、若くも愚直に守るタイプ独立店もあるようです。

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2)創作系

創作系はa)他料理素材を使ったり、b)クリエイションにこだわったりとするのものがありますが、大抵両方のテイストが入っているのではないでしょうか。

寿司にフォアグラを使ったり、肉じゃがの構成要素を変化させたりするものです。他料理から進出して来た料理人のお店や、和料理なら和料理の職人だけれども若手の方が他国料理に触発されて、のパターンが多いのでしょうか。

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もちろん、新しい手法を取り入れない、というお店はかなり少ないでしょうし、寿司が誕生した江戸時代からすると新しい手法の軍艦巻きが広まって、もはや伝統的に見え、海苔で巻かないイクラカニ、ウニの寿司の方が珍しい選択でしょうから、この辺を厳密に考えると多くのお寿司屋さんは創作と言えてしまいます。そこで、テリーヌやジュレといった西洋料理的な手法や、フォアグラやバルサミコ酢といった西洋料理の素材を使っているものに関しては、創作的といった方が分類する意義がありそうです。

また、熟成のような手法も、もともと「寝かす」といった仕事が江戸前寿司にはありつつも、それを強調して注目さらたのは、熟成肉ブームの後のようですので、これもニューウェーブといえそうです。

 

中華やフレンチ、東南アジア料理なども日本に入った時点で日本人に好むようにつくられてますし、昔の人より現代の人のほうが塩辛くない味付けが望まれる点では常に革新があるとは思いますが、単に「日本料理」「和食」というのも幅がありますのでこういった分類をしていければより、店の特長や時代の特徴を掴みやすいかもしれません。

DEfeSIVE BATTLE:GG Antibesの購入後

ガジアーノガーリングのアンティーブスを買って約1ヶ月。週一で履いてみたのでその感想をメモとして。

いまや、ジョンロブと同じ価格帯となったこの新興なれど高級ブランドについて、まず感じるのはその履き心地です。エドグリに満足しない人が、辿り着く、と聞いたことがありますが、たしかにエドグリ以上のつかみ具合のあるラストでした。具体的にはかかとのつかみがすごい。もちろん全体的な締め付け具合も絶妙です。

また、革も一目見てよい革が使われていることが分かります。ジョンロブと同じくらい良い革なのでしょうか。

 

逆に、苦労した点は、まずはメンテナンス面でのシューキーパー。ラストの形がすごい特殊すぎてフィットする既成シューキーパーがないように思えます。既存のシューキーパーを削って入れたという人も居るみたいですけれど、けっこうなDIY力を求められるかと。シューキーパーはトレーディングポストやユニオンワークスといった現状の取扱店で販売しているようです。お値段が2万円と他のシューキーパーやメンテ用品にしてはかわいくないお値段ですが、手に入れないで型崩れしても怖いと思い、購入しました。GGの靴を手に入れる方は、ふつーのシューキーパー代と考えず、専用のものを購入することを考えたほうがいいのかもしれません。

 

また、履き心地がタイトすぎて、「洗礼」を受けることになりました。かかとなどが痛くて半日履けないほどでした・・・1ヶ月すると一日はけるようになり、常に独特のタイト感を味わえるのですが、タイトフィッティングが嫌いな人には合わない靴かもしれません。

革は先述の通りとてもよく、サフィールノワールで磨くととても光ります。・・・もっぱらつかっているのが中身が(当時の)サフィールノワールといわれているコルドヌリアングレーセだったりしますが。濃い目のブラウンになればと思って濃い目を使っています。

 

ローファーとして、個人的には過去最高のフィット感があるアンティーブス。これからも育てて、機会があったら?ほかのGGの靴も試してみたいですね。

丸の内サブジェクティブ

スーツでもタイでもあるいはパンプスでもいいのですが、ファッションアイテムの価格帯について、これまでのものよりもワンランク上を目指すのはどういうときでしょうか。やはり、ハレの日用?

ハレの日だからこそこだわるのは日本人特有なのか世界普遍的なものなのかはよくわかりませんが、さまざまな日本語ブログなどを読んでるとそういう人が多い気がします。

大切な商談用のオーダーメイドスーツ、祝いの場のためのジョン・ロブやエドワード・グリーンのキャップトゥなど。

値段も高い買い物ですから、思い入れのある機会にこそふさわしいというのはとてもわかります。

スーツやフォーマル靴であれば、冠婚葬祭用のものをそのままビジネスで使ったり、その逆ができるわけで、大切な場面はこれ!と選択して着回すこともできます。

 

しかし、個人的にはもっと近い距離感、つまり日常の大切な場面を彩るアイテムとして質の良いものを身に付けたいと思うのです。キャップトゥが必要になる場面はたしかに、人生で重大な局面のことがおおいでしょうし、そこにこだわるのはわかるのですが、ミヤギコウギョウのキャップトゥがその特別な場面でちゃんと足元で輝いているので、よりクオリティの高いものは、少なくとも当分いいかな、という気分なのです。……まあ、距離感の問題なので個々人のフィーリングですが。神棚に飾ってしまうのではなければ、着用頻度はともかくファッションアイテムとしての在るべき姿なのではないかと。

 

というわけで、今夏のクリアランスセール、エドワード・グリーンチェルシーのマイサイズなども対象だったのですが、どうにも食指が動かず……もともと探していたのが、①表革のスリッポン、と②ストームウェルトの短靴でした。①は、冬にキャベンディッシュ3を手に入れたことで、スリッポンがスエード2種、茶表革3種、黒表革1種となったのですが、思いのほかスリッポンを履く機会が多く、よりドレッシーなものあったらと思っていました。②については、ストームウェルトのブーツがある一方で短靴がなく、夏の嵐の時用にあったらと思ってました。

いずれにしても思っていたものがあったら、というニュアンスでした。ジョン・ロブのロペスのネイビカーフや、エドワード・グリーンのラウンズの黒表革などがセール対象となっていましたが、なかなか希望に合わず…….もちろん欲しくないと言えばウソなんですけど笑

 

そこでいろいろ思案してたところ、見つけたのがこれ。

 

ガジアーノ&ガーリングの「アンティーブ」です。最近見なくなった感じがしますがドレッシーさが気に入りました。

まだ、試着段階ですが、ラストもとってもあってそう。

日常づかいといえ、ガンガン使うのははばかれそうですが、丁寧すぎず履いていこうと思います。

 

購入店は有楽町/銀座の阪急メンズ東京。前のクリアランスではキャベンディッシュ3をここで買いましたが、今夏は他にもエドワード・グリーンが格安だったりと、一番セールで頑張ってる感がありました。

 

あ、そういえば、エドワード・グリーンのLowndesは同じようなタッセルスリッポンのBelgraviaの命名元「ベルグラーヴィア」にある通りの名前から来ているようですが、この通りの読みは「ラウンズ」が正しいようです。同名と思われるクロケのモンクストラップが違う発音なのは、なぜなんでしょうか。

また、ガジアーノ&ガーリングAntibesはフランスのカンヌ近郊の地名だと推測されますが、フランス語→日本語発音だとアンティーブのようです。まあ、イギリスブランドなのでフランス語→英語→日本語と来ているせいか、アンティーブス表記が多いのでしょうか。

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