キャラバン隊の到福

旅は楽しいものですが、冠婚葬祭で遠方に出るとなれば、服や持ち物に制限がついてきます。ご祝儀やお香典、それにともなうドレスコードに従った衣類、観光にするには向かない服をお供にせねばなりません。もちろん、主は旅行ではなくてその式に出席することなのですから、手を抜くというわけにも行きません。

今回は夏の結婚式とは対極の、お葬式で北へ向かいました。

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まず考えたのは、靴。靴好きというのもありますが、北の地方は今の時期雪がまだ降るし積雪も……と考えたブーツに。

ちょうどある丈が短めのグレーのウールパンツと合わせれば雪降る気温にも対応できそうてす。

やはり、黒の喪服は必須……と言いたいところですが、黒一色はなんどかな、と思うも、喪服=ブラックスーツ、というのが常識な人もあり、顰蹙は避けたいことでもあります。

そこで、黒に見えるダークネイビースーツに同じくダークネイビーのソリッドタイ。さすがに靴がブラウンブーツでは似合わないため、キャップトゥにすることに。ミヤギコウギョウのキャップトゥは慣れきったものの、レザーソールの短靴を雪の環境で履くのは気が引けます。

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そこで、グレーのパンツのジャケパンスタイルで現地まで行き、式典だけはスーツに。観光する際もジャケパンスタイルで行くことに。

問題はコート。北海道の冬はコートでも寒いので、防寒性の高いダウンジャケットに行くことに……でも外での儀式には対応し難いところが、心配でした。

しかし、北海道では建物内はもちろん地下通路など暖房がかなり効いています。結果的にスーツでも暑いくらいで、ちょっとの屋外移動は問題なく過ごせました。


葬儀は遺された人たちの集いの場。良い格好で良い想いでづくりに貢献したいものです。

二次関だけのバカンス:メイドインジャパンの靴

日本製を絶対に買わない、と言う人が家電や車なんかだとそこまで聞きませんが、ファッション関連だとやや多く現れる気がします。


たしかにスーツファッションの本流はイギリスですし、フランスやイタリアの各ファッションが「らしさ」を持っているのに対して、日本ならではのスタイルというのは弱いかもしれません。少なくとも欧米ブランドが、それぞれ「ならでは」の進化しているのに対して日本にはないよね、というのが、ニホンモノを持たない人の主張でしょう。

しかし、こうしたコメント、正直最近は減っていると思われます。


1つは日本のモノがシルエットや縫製などクオリティが良くなったこと。もう1つは日本製衣類がそうしたしっかりした設計のものばかりになり、安かろう悪かろう的なモノが中国より東南アジア製品になっていったこと。この二点の影響でしょう。

象徴的なのは日本でのグッドイヤーウェルテッドシューズの最も安価なものの1つは日本製ではなく東南アジアブランドであることでしょうか。


実際、日本の靴はシルエットや素材も充分ではないかと思います。

私がたびたび紹介して来たWFG別注ミヤギコウギョウのものは、ラストが合えば、丁寧な縫製を含めたしっかりした造りで、欧米のものでこの価格では買えないでしょう。踵が小さく、英国産の靴も、モノによっては脱げそうになる私の足にピッタリとフィットします。強いて言えば革が同価格帯の他ブランドよりやや劣るかもしれませんが、磨けば光りますし、手入れをきちんとすれば問題はないと思います。(ここを高級にしたアップデート版があれば……とよく聞く気がします。パターンオーダー会をたまにやってますが、そうした意味ではここで消化される欲求かも)


セントラル製靴のものも最近履くことがおおいですが、これも縫製などつくりの面、ラストなどのフィットの面もとても良いと思います。ミヤギコウギョウより革質は良いきがしますが、そのぶんステッチは荒いかもしれません。比べれば、のはなしですが。

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逆に日本ブランドの靴に足りないと思うのはカジュアルの靴。

例えば、トリッカーズのカントリーブーツや、ローファーなど、です。

キャップトゥや、セミブローグは日本製で揃えたのに対し、アンラインドローファーや、アンラインドチャッカといった「しっかりしてるところとゆるいところがある靴」や、カントリーブーツのような「ゆるいけど、どっしりしてる靴」といった塩梅は日本ブランドでは見かけない気がします。もちろん日本ブランドが取り組むほどの需要・競合とのブランド力などマーケティング分析によってあえてやってないジャンルなのかもしれません。

個人的にはオンは日本ブランドに任せっきりですが、それが全てになる日も近いのかもしれません。

The Great test. feat スエードブルゾン

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ふらっと店に入ると3月に入ったこともあり、スエードブルゾンが半額になっていた。スエードブルゾン。レザーよりも表情は柔らかく汎用性は高そうだ。初のスエードブルゾン。雑誌などでも休日の格好として出てくるし、持っていて損はないだろう。マイサイズで展開しているのは、ブルーと、ライトブラウンだ。ブルーは、ネイビーと言うには明るく、スエードのせいなのか、光沢はないため、落ち着いて見える。一方で、ライトブラウン。冬のアウターとしてはやや明るく、ともすると黄色に見えそうな気もしてきた。

手持ちのアウターは圧倒的にネイビー、ついでグレーが多く、ブラウンはコットンジャケットが1着だけではないか。冬のブラウンアウターとしてはありかもしれない。しかし、ブルゾンは極寒の時はきついだろうし、こんなに、明るいブラウンを着こなすことができるのだろうか。しかし、ブルーはネイビーと同系色だが、それより明るく…

と逡巡して買ったのがこのスエードブルゾンです。

セールだし、そこまで考え込まなくても…というもっともな意見の一方で、しかしてクローゼットの肥やしにするわけにはいきません。私はそこで、ブルーのほうをチョイスしました。理由としてはブルー系、ネイビーのジャケットは着なれており、まずはジャケットの代わりにブルゾンを着て「着こなし方を手に入れよう」としたのです。

実際にブルー系統のジャケットで最も着こなしが安定しているワントーンコーデ。これと同じように、青系のシャツ、青系のパンツと合わせてみました。ジャケットと違うスタイルのアウターで新鮮ですが、意外としっくりきます。

次にシャツを白に替えたり、ネイビーTシャツにしたりと、してみても違和感があるわけでありません。ワントーンを基調にすることで新しい色に挑戦することができました。

ピンクジャケットの失敗がありました。ですが、あたしいシルエットを知っている色で挑戦することでなんとかワードロープの一着にすることができました。

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The Great test:新しいスタイルへの挑戦について

ピンク色のジャケットを買ったことがあり、その際は案外派手目だが、着ようと思ったが、片手で数えるくらいしか来ませんでした。一方で、ピンクというよりは傾向ピンクのような色のセーターがあります。こちらは、ネイビーやグレーのものより着る回数は少ないですが、ピンクジャケットよりも用いた回数は多いです。はたまた、レザーブルゾンも何度か着たことがありますが、表革レザーのクラシックなつくりのものはしっくりこず、タイトシルエットのブルースエードのものは愛用しています。

 

着ると思って買ったのに、思ったより使わなかった、ということは頭のてっぺん帽子から、足元の靴まであるあるですし、「人は失敗して成長するもの」といわれればなるほどそうなのかと思いますが、しかし。これには大きく分けて2つのタイプがあるように思えます。

1つは、その色が似合わなかった、というもの。特にそのアイテムではちょっと・・・というものですね。個人的にはピンクのジャケットがそうでした。ピンク。春らしいと思って買ったのですが、頭の中が晴だったのでしょうか。派手な色目なので、着用シーンがわからず、スヤスヤとクローゼットのなかで眠ることになりました。一方で同時期に買った、淡いブルーのジャケットは着たおすほど、着たので、これは着慣れたネイビーの延長線上にあったから、あわせやすかったのでしょう。ピンクのセーターは確かに着ていますが、これは、ジャケットとの着用が必ずで、単品で用いることはありません。つまりさし色として機能してもらってますが、似合う色、というには(少なくともまだ)ほど遠い存在です。

もう1つは、そのシルエットが合わなかった、というものです。これはそのとき、その年齢の気分によるものなのか、変わらないであろう個人的な趣向によるものなのか、判別がつきにくいところですが。個人的には、そういう流行傾向の中で成長してきた性なのか、あるいは自分を含め観測周囲のダサい=オーバーサイジングのミスである事例を目にしてきた性なのか、リラックスなフィットのものよりも、タイトフィットを好む傾向にあります。レザーブルゾンにしっくりこなかったのは、私よりも恰幅が良かった祖父のものだったからかもしれません。

シルエットは自分の好みを吟味する必要がありますが、色については失敗を少なくする方法があります。面積が少ないものからチャレンジするのです。メンズならソックスや、タイなのがベストでしょうか。たとえば真紅のタイを買ってみる。どうにも使わない。同じく真紅のソックスを買ってみたがさし色として使う気分になれない・・・どうもこの色は似合わないのではないか、一方でこのグリーンのものは良く使う・・・といった具合です。難しいのは色はちょっとでも素材が違えば違う色に見えるし、同じ色でも肌や合わせるほかのアイテムによって見え方が大きく変わるということです。ブルーのネクタイも明るいブルーからクロのような濃紺まであるように、ピンクやグリーンといっても多様な色があり、レモンイエローと山吹色ではだいぶ違う色ですが、一色用いて、一口に黄色は似合わない、というのは時期尚早というあたりが難しいところ。新しい色にいろいろチャレンジしたくなる春ももう近くなのでしょうが、ジャケットは最後ですね笑。

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春典序曲:寒暖差の激しい日の装い

立春、雨水と暦を巡ってくるにつれて、日中は暖かいものの、朝晩は寒いという日が多くなってきました。そんな日は格好に困ります。昼に合わせると朝晩が寒く、朝晩に合わせると昼は暑く…そこでいろいろと模索してみたのですが、いまのところはこのようなスキームで服を決めることにしました。

①外出が必要な日なのか?いつ?どのタイミングで?

オフィス以外の、打ち合わせをはじめとしたもろもろで外出が必要な日であれば、その外出に合わせた服装をまず考えます。たとえば、オフィスに行った後、一番暖かい昼からクライアントと会議で、そのあと帰ってオフィス仕事…といったような日であれば、昼に合わせた格好を考えます。個人的なルールとしてはジャケパンなのか、スーツなのかはともかく、外部とのビジネスの会合を持つ場合は、黒靴で、ニット類は着ないことにしていますので、この時点でシャツとジャケットという格好が決まります。そして、日中ジャケットだけで過ごせる暖かさ、というのであれば、オフィスへの行き帰りはコートを身につけるが、日中はスーツ・ジャケパンでの外出・打ち合わせといった形にしています。

終日オフィスにこもりきり、の日であればオフィスではジャケットを脱ぐので、ニットを着ますし、夜、たとえば学生時代の友人と飲む、というような日だったら、中にニットを着て調整したり、あるいはコートを着るかもしれません。

 

②気温の高低はどのようなものなのか?

気温の寒暖差が10℃あるといっても、2℃→12℃と8℃→18℃では必要となる装備は大きく異なります。個人的には、6℃付近を下回るとコートは必須になりますが、最低気温8℃であれば、ジャケットにマフラーでだいぶ暖かいです。終日外出で2℃のタイミングが一番外にいて、日中は建物の中、というのならば、コートをメインとして装いを考えるところですが、18℃のタイミングで外に出るのならば、冬物の中でも薄手のジャケットに朝晩はマフラーを巻いて、出発するでしょう。

 

③どの素材を着ていくか

 ジャケットでも梳毛のウールジャケットと、ツイードの厚手のものでは、表情だけでなく、着るのに最適な気温も変わってきます。やや寒いがコートを着るまででもない最低気温、日中はさらに暖かい日で、外出続きなら、ツイードではないですが、紡毛の厚手のジャケットを着て行くことが多く、寒さにも適応できる服で乗り切ることにしています。

また、ニットも、ウールのものとコットンのもの、リネンのものでは異なります。こうした素材を生かしてマフラーしたりやニットをシャツとジャケットの間にはさんだりとすると冬だからコートを着たものの、暑くて脱いでかさばる、といったことも防ぐことができます。

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装の考古学

ファッションの歴史を知っていると、これをどう使うのか?と疑問を感じたとき、あるいはマンネリに陥った時、突拍子もないアレンジを見たとき、その正しさや飛躍具合がわかるわけです。もちろん、そこに拘泥するとかたくななスタイルに陥ってしまうのですが…

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たとえば、パンプスと聞くと女性ファッションの基本という気がしますが、これはもともと男性が(も)履いている靴のスタイルでした。ルイ13世肖像画なんかが、フランスの貴族文化の象徴としてよく登場してますが、彼らの足元をよく見ると、パンプス。オペラパンプス、といったカテゴリとして最上位の靴のスタイルとしていまでも用いることがあるそうで、英国靴メーカーのなかにはいまだ取り扱っているようです。ローファーはこんにち、最もフォーマルから遠い位置にある靴のカテゴリモデルですが、タキシードなどの礼装に用いることがあります。これはパンプスに近いデザインならば、ということなのでしょう。あるいはタッセルローファーがスーツにも合わせられるというのもこうした歴史の流れの感覚の上にある気がします。

(一方で、室内履きから、現在のローファーの流れがあったのでしょう。違いはエプロンダービーの箇所なので、そこがフォーマル度の高低にかかわっていると言えそうです。)

こうしたものは知識として本などから得ることもできますが、肖像画や写真からも得ることができます。絵や写真は文字以外の情報が、視覚的に伝わるので着丈や注目するアイテム以外の全体の雰囲気というべきものも伝わってきます。東京の昔の写真を見て、今との風景の様変わり具合や逆に現存する建物に感動するだけでなく、道行く人が何を着ているのか、どのように歩いているのかをつぶさに見ていくと、昔の東京の人の装いや生活がわかってきます。

または、時代劇が着物でチョンマゲなのが普通なように、明治期・昭和期のドラマなどでも、当時の服装、そしていまへの変遷が分かります。明治期の人は三つ揃えのスーツしか着ないところを見ると、(欧米はともかく、少なくとも日本は)それが当たり前の時代だったのだなあ、と感じることができます。もちろん、チョンマゲのスタイルが戦国時代と江戸後期では違うはずだが、このドラマではいっしょくただ、なんてことのように、時代考証がしっかりされてないものもありますが、いつもストーリーしか追ってないドラマの新チェックポイントとして見れば見方が変わってきます。

洋装の原点、欧米ではどうだったのか?というのもこうしたドラマなどでわかるところが大きいです。欧米の場合1950年くらいの映画は簡単に視聴ができるのも多く、当時の衣装がそのままスクリーンで見られるものです。

時代考証がしっかりしているドラマとしては、BBCドラマ『ダウントン・アビー』シリーズがとても参考になります。貴族ドラマなので、当時の貴族の風習・カルチャーを知るきっかけにもなりますが、1800年代終わりから1900年代の前半を描いているこのドラマシリーズを見ると、最初「スモーキングジャケット(タキシード)」が燕尾服より明らかに格下だったのに、だんだんと簡単なディナーの席ではタキシードでも問題にならなくなってきていたり、地元での散策=オフの時間と、ロンドンでの会合=オンの時間では服の色合いが異なっていたりととても示唆に富んでいます。

This is lovely:セーターとカーディガン

最近、オフィスに一日いる日はくつろぎと動きやすさから、ニット系のものを着る日が多いです。肩パッドなし、ジャージーまたはニットジャケットのような動きやすいジャケットが多いとはいえ、パソコンや書類とにらめっこしたり、荷物を運んだりするのに、ジャケットはないほうがいい。しかし、ニットといってもセーターやカーディガンではだいぶ違うと感じるようになりました。

Vゾーンにおける面積が違うと大きくイメージが違うものです。

セーターもカーディガンも来ていないと、3つボタン段返りのVゾーンはこんな感じ。

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 このジャケットに合わせる揃いのベストを着ると、Vゾーンはこんな感じに。

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若干狭まる感じになるでしょうか。しかし、はっきりとVゾーンが小さくなるわけではありません。ジャケットを脱いだり、ジャケットの前を大きく開けないとベストをきていることがわからない、という人も少なくないですが、こうした狭まりの自然さを見ると、頷けます。

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 今度はカーディガンを差し込んでみました。一番上のボタンを外せばVゾーンの面積はカーディガンなしの場合とそう変わりません。Vゾーンの広さについて調整が利くのも、カーディガンのよいところではないでしょうか。

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これはセーターを着た場合。Vゾーンがかなり狭まります。

ジャケット・スーツスタイルの場合、Vゾーンのありかたが全体の印象の大部分を占めますが、それは単にジャケットとタイ・シャツだけでなく、こうしたカーディガンやコートとの組み合わせによる「流れ」の問題もあると思います。チェスターコートのなかで近年段返りやVゾーンが深めのものが登場していますが、これはジャケットの連続性、流れ、をスムーズにするためでしょう。

こういった意味では流れを一度ストップするセーターは、ジャケットと併用するよりも単体あるいは、ダッフルコートのようなでVゾーンが浅いものと着たほうが映えるのではないか…と思います。ニット類としてカーディガンといっしょくたにされがちですが、セーターはだいぶカジュアルかつ、別の部類の衣類と言えるかもしれません。

 もしくはベストのようなボタンをする衣類との系列にカーディガンは存在していますが、セーターはそこから一線違うところにあると言えますね。

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カーディガンもベストもハイゲージのものだとオフィススタイルに、ローゲージだとカジュアルスタイルに合わせやすいですが、着太りしにくい、という観点でハイゲージのものをよく使っています。なお上の画像のニットはすべてユニクロです。ユニクロのハイゲージニットは多色展開しており、なかでもネイビーとライトグレーが好みの色ですが、お値段的にもいろいろと試せるのが良いですね。